魔獣進化論 番外3 アンデッドの原理
3 アンデッドの能力と原理
アンデッドに共通する特徴として、精神に影響を与える攻撃が利かないことが挙げられる。但し一部の霊体系のアンデッドでは知性を残すのである種の限定的な精神攻撃は効果を及ぼすかも知れない。
アンデッド化の為には魔力が必要だが、これを維持するためには生への執着が欠かせない。これがないならそれ以外の魔法生命体と同じになる。
外部生成型では魔力を自己生成出来ないので再生能力を有しない。但し、魔力を追加投入することで再生させることは可能だろう。対して自己生成型のグールやヴァンパイアは肉体の維持や再生に魔力以外の手段を必要とする。彼らの”食欲”は弱点にも長所にも成りうる。
肉体を持たないタイプは生命体への憑依能力を持つかも知れない。アンデッドは憑依対象の記憶をその間だけ利用出来、またその肉体の能力を限界まで引き出せる。
肉体の有無に関わらず、アンデッドは生前の記憶を一部欠落させてしまう。端的に言えば、生への執着をもたらす部分以外は抜け落ちてしまう。誰かに殺害された人間の幽霊は誰に殺されたか憶えていない。あるいは殺された原因が分からずに化けて出る。死の原因が分かってしまえば、それが納得出来るか否に関わらず、生者の世界に留まることは出来ない。逆に言えば、アンデッド化するにはその部分の記憶を奪ってしまえばよい。
4 アンデッドと霊魂思想
アンデッドの存在を担保するのは霊魂の存在である。
古代エジプトでは魂を五つの部分に分け、その中の一つの拠り所として死体の保存即ちミイラの作成が行われた。また中国の道教では霊魂を天に昇る”魂”と地に帰る”魄”の二つに分けている。魂が無くなり魄だけの存在となったのが中国のアンデッド=殭屍である。
その他、ヨーロッパでは人間の構成要素として霊魂(アニマ)・精神(スピリット)・肉体(コープス)に分けられ、これが錬金術の三原質と結びつき、またキリスト教の三位一体思想に比せられた。
要するに、アンデッドとは魂の一部が欠けたモノと解釈することが出来る。
5 風水と仙術
此処ではアンデッドに関連する部分だけを紹介する。
殭屍とは本来は腐敗しない死体のことで、屍蝋現象の一種と考えられている。これがゾンビーなどの同類とされたのは映画の影響である。殭屍の出現要因の一つとされるのが、風水的に正しくない祀り方をされることである。つまり裏を返せば人為的に殭屍を作り出すことが可能であると言うことである。
仙人の内、尸解仙だけは死を経て成るという点で他の地仙・天仙と異なる。尸解と言うのは、本来は埋葬された死体が消失する現象を指したらしい。要するに、尸解仙とは広義にはアンデッドの一種と考えられる。