古典的異種族考 1

§1 エルフ

 ”本来の”エルフというのはゲルマン神話に起源を持つ妖精である。これが現在の様な亜人類としての位置づけとして認知されたのは言うまでもなく指輪物語を初めとするトールキン教授の著作に基づく。トールキンのエルフが分裂していく過程は、ゲルマン族の大移動を想起させる。彼らが寿命のない優れた種族として設定されているのはトールキンの持つある種の選民思想を想像させるが、その点には深く突っ込まない事にしよう。

 現代のファンタジー中のエルフは森の民という位置づけが強い。その居住地域から見て農耕民ではなく狩猟民である可能性が高い。人口が少ないのは、寿命がないあるいは高寿命であると言う点からも導き出せるが、狩猟採集生活であるが故に大きな人口を支えられないのだと言う理屈も成り立つ。

 狩猟採集生活を営み、且つ高い身体能力を有するとなれば、現実に当てはめれば黒人に相当するのではないか。人類は元々アフリカに発生しそこから全世界へ散っていった。有る地域で人口が過剰になれば、生存競争に負けた人間が外部へはじき出される訳で、出生地に最後まで留まった彼らは純生物的な優越者なのである。(彼らの身体能力の高さは五輪競技等で明らかだろう)これと同じ現象は大陸中央部の遊牧民族の中でも生じた。いわゆるゲルマン民族の大移動も、大陸中央部から追われた遊牧民族の圧力に押し出された結果であり、最後に残っていた連中を統合したモンゴル人が大陸を席巻したのも当然と言えよう。

§2 ドワーフ

 同じくトールキン作品でメジャーになった種族であるが、その本来の姿は白雪姫に登場する小人達を思い出して貰えばよい。元々はゲルマン起源の妖精であり、エルフやゴブリンと同一視される存在でもある。西洋風ファンタジーRPGにおけるドワーフとゴブリンの敵対関係はある種の近親憎悪と言えるのかも知れない。

 こちらも山の民としての特徴を抜き出せば、異種族ではなく単なる民族として存在可能である。自作の世界では長大な戦斧を担いだ傭兵種族(モデルは言わずもがな)として設定している。

§3 小さな人々

 ドワーフも人類と較べれば十分小柄なのだが、こちらはトールキン教授が想像したオリジナル種族を指す。著作権の関係からRPGでは様々な呼び名で扱われている。

 実際にこうした種族が存在したらどうだろうか。よほどの特長が無い限りは生き残れないのではないか。最古典RPGでは強力な魔法耐性(原典である「指輪物語」に由来する)と言う属性が与えられていたが、魔法文化全盛の世界で魔法が効きにくい種族というのはかなり特徴的であろう。

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